#デジタルHR - ヒトを科学する

第2回. みんなのパーソナルシート

デジタルHR - ヒトを科学する

こんにちは。本部のデジタルHR領域を担当している田村です。

この記事では「デジタルHR - ヒトを科学する」シリーズの第2回をお届けします。

第1回をお読みでない方はぜひ「第1回. ヒトを正しく理解する方法」もご覧ください。

目次

前回のおさらい

僕らデジタルマーケティングマフィアが、データドリブンで科学的に、マーケティング論を駆使して、自分たちの「HR」についてやりきることを考えた。
その中心にあるのが「デジタルHR」だ。

前回は「ヒト」を科学する際のアプローチとして「どんな人物なのか」を可視化するために、マルコポーロを導入した話をさせて頂いた。

データ分析する上では、その後の分析に選択肢や観点を与えるという意味で、より細かく、より多くの因子に分解できたというのはポジティブなものであった。
一方で、分解すればするほど「どんな人物なのか」を理解、認識しにくくなるという課題も生じた。

そこでより活用(理解)しやすくするため、オリジナルの類型論である「DIタイプ」を構築したのである。

さらに、メンバーひとり一人のプロファイルを表現した「DIパーソナルシート」を2020年6月にリリースした。

今回は、この「DIタイプ」と「DIパーソナルシート」について詳しく紹介していきたい。

DIタイプの構築

「DIタイプ」とは、どんな人物なのかを理解しやすくした、DI事業本部のオリジナルの類型論である。

本部2,000人のデータを、レイル社のアナリストの協力のもとクラスタ分析した結果、「DIタイプ」は大きく3つのカテゴリ、さらにそこから細かく11のタイプに分類することが出来た。

詳細は以下のデンドログラム(樹形図)を見てもらいたい。
樹形図の分岐はタイプの類似を示している。

デンドログラム(樹形図)
DIタイプのデンドログラム(樹形図)

DIタイプの3つのカテゴリ

まずは、大別した3つのカテゴリであるⅠ~Ⅲの特徴について説明しよう。

<カテゴリⅠ>
キチンと手順に従って、実務やオペレーションが出来る、実現場を支えるメンバーだ。

<カテゴリⅡ>
B~Dまでは、専門家や職人と言った自らの役割やスペシャリティ、仕事そのものとキチンと向き合える特性、また単独で(一人の社会人として)成り立つ特性も持ちあわせ、カテゴリⅠと同様に実現場を支える要素が強い。
E~Gに行くにつれて、他人とのコミュニケーションに長け、チームワーク、協業志向、親和動機といった社会化・組織化された集団の中で活かせる性格特性の要素が強くなっていく。

<カテゴリⅢ>
よりリーダーシップ、牽引力の要素が強くなる。自我が強く、モチベーションとしても達成動機や権力動機のスコアが高い。
人物的にはカテゴリⅡのFやG同様に、明るい、外向的な人が多い。

DIタイプの11タイプ

さらに、3つのカテゴリを11のタイプに区分けした。
最終的に、わかりやすいように3つのキーワードで表現し、補足説明を加え、「DI TYPE」としてモデル化した。

DIタイプの構成比および分布

タイプ別の構成比率や幾つかの属性別の分布も確認してみよう。

DIタイプの構成比および分布
DIタイプの構成比および分布

構成としては、実現場を支えるⅠ-Aタイプが最も多い。

より専門的な性格特性を保有するⅡ-B~Eまでを含めると半数以上を占める。

組織長やマネージャーといったリーダーシップが求められる職務に就いている層を見てみると、満遍なく全タイプに存在するものの、やはりカテゴリⅢに多少多く見られるのは、性格特性を見ても頷けるポイントであろう。

特筆すべきなのは、年度末評価で高成績を収めている「活躍層」の構成である。
ざっと眺めてみても、有意な相関性は見受けられない。活躍する層は、全タイプ、ほぼタイプ構成比率通りに存在する。

DIタイプにおける考察

類型論によくある失敗なのだが、タイプによって優劣を付けたくなってしまうが、実際は類型論では優秀か優秀でないか、活躍するか活躍しないか、は予測できないのである。

さて、そうなると、このデータを採用でどう活用すればよいのか、これじゃ、血液型性格判断や星占いと変わらんぞ、という問いが生じるのは至極当然である。

この問いが「モデリングによる活躍予測度判定」の話に繋がっていくのであるが、その話は次回。

DIパーソナルシートの読み解き方

どんなに優秀な上司であっても、自分自身の独自フィルターを通してしか他人を見られない。
そして非常にやっかいな事に、その上司が優秀であればあるほど、他人を評価する自分自身の眼(力)に疑いを持っていないものである。

「どんな人物なのか」をデータドリブンで説明する際に皆に活用してもらうにあたり、共通言語化したいと思って開発したのが、これからご紹介する「DIパーソナルシート」である。

DIパーソナルシートの概要

「DIパーソナルシート」は全3ページの構成となる。1ページずつ説明していこう。

具体的に実際のデータを使って説明しようと思っているのだが、サンプルとして使っているのは、常務執行役員の山田のデータである。無許可なので消されるかも(笑)
ちなみに、山田のデータに関して、あらかじめコメントしておくと、ぶっちゃけ、記載のままの人物である!

山田 和宏 1ページ目:山田 和宏を「類型論」で見る

まずは人となりを把握しやすいように、1ページ目は類型論をまとめて記載した。

左上に「DIタイプ」を記載。その右はデビットメリルのソーシャルスタイルを独自にカスタマイズしてグラフ化した。
下部はユングの心的エネルギーをベースにして思考の方向性を類型化したものである。

類型論は、パターンのいずれかに当てはめて考えるため、その人の全体像はイメージしやすくなるが、その反面、個人間の差は表しにくくなる。
また、記載したパターンに完全に一致するケースは少ないため、実際の性格特性とのズレを感じてしまうこともある。誤って使われてしまうと、血液型診断のように、「あなたはB型だから」と恣意的な誘導がなされてしまうケースもある。

理解しやすくするためのページではあるものの、そのパターンとの合致度(実際の性格とタイプが定義している典型的性格との距離)は「強度」として数字化して記載した。
恣意的な誘導を少しでも避けるための、小さな抵抗である。

ソーシャルスタイルは、1960年代初頭に心理学者のデビッド・メリル氏とロジャー・リード氏によって提唱された経営やリーダーシップのパフォーマンスを予測するための理論だ。(分類軸の名前は、少し分かりやすく変更した)
そして同様に、類型化した場合の恣意的な誘導やレッテル貼りを避けるためにも、各分類の合致度をグラフ化した。

山田の例でいうと、どの方向性にもバランス良くスコアリングされている。
一番強く出ているのが、My Way Fitst(通常の呼称は「ドライバ」)なので「リーダーシップ」「独力で進められるパワー」「他人からの指図を嫌う」「効率と成果」にカテゴライズされるのは明確だ。
一方で同時に、Motivation First(明るくチャレンジ精神にあふれ、他人のモチベーションを上げる)も、Logic First(論理的に考え、説明する)も、Team First(仲間を重んじ、他人のために協業できる)の要素も強く保有しているのが分かる。
「リーダータイプです」と単純にカテゴライズするよりも、それぞれの要素をどの程度保有しているかも知った上で、類型論的理解をするのが良いと思う。

ソーシャルスタイルがその人の外面的な側面や社会的な状態での行動傾向に着目している一方、1ページ目の下部に記載したのは「思考の方向性」。言うなれば人の内面的な傾向や、心の性質や深さ、源に着目した類型論である。
ここに関しても、例えば A=51 対 B=49 の傾向であるにも関わらず「Aの傾向有」とレッテル貼りされることを防止するため、傾き加減を帯グラフを使って表現した。

山田の例でいうと、4項目とも、どちらかに偏るスコアが出ているが、全員が全員必ずしも偏りが明確になるという訳ではない。
むしろ、4つ全ての項目がどちらかに傾いているのはレアケースだと思って良いと思う。

山田 和宏 2ページ目:山田 和宏の「代表的な特性因子」を見る

2ページ目は本丸である、代表的な特性因子のデータをアウトプットした。

DIパーソナルシートの1ページ目は、分かりやすく全体像を把握してもらうことが重要なのだが、この2ページ目はなるべく解釈を入れずにマルコポーロのデータをそのままグラフ表記することを心掛けている。

ただし前回記載した通り、各特性因子の名称のイメージやスコアの高低だけで判断されないようにするためにも、下部に良い面と悪い面を並列的に記載した。
とは言え、特性因子の補足説明は機械的に出力されるため、全体の波形を見て総合判断するのは、読んでいる人がやらないといけない。

山田の例でいうと、ハッキリとスコアの高い項目が表れているので、一見そこに目が行きがちだ。

挑戦心、成功欲が高く、回復力、負荷耐性も高いので、キラッキラに輝いているスーパーエースを思い浮かべてしまう。

一方、波形で捉えるというのは、性格特性因子間の関係性に着目したり、幾つかのグルーピングをもとに傾向を読み解くという意味でもある。

例えば、先ほど記載した高い傾向のある因子と、チーム志向と協調優先、多様性対応、交流欲求、移動容易性といった低い傾向にある因子を組み合わせると、「自我の強さ」「周りを顧みない傾向」「一見明るく見えても内面はシャイ」とか、「自分自身への目標設定の高さ」や「自分自身でやり遂げる」と言った傾向も見えてくる。
「自己理解」が低く、「挑戦心」「ポジティブ」が高い人の傾向は周りが無謀と思える時でも勝負するときは、思うがまま決断をするタイプだ。

ちなみに、彼の学生時代のポジションはピッチャーだ(笑)
ピンチの時は強引にストレートで勝負を挑んでいたのではないだろうか。
僕みたいに全てを自分がコントロールしたいタイプのキャッチャーからすると、「ちょっとタイム」と言ってマウンドに行ってクールダウンさせる場面が結構あったことだろう。

前回からの繰り返しになるが、DIパーソナルシート最大のポイントは、こんな感じで各特性因子の強弱で作られる波形から全体像をイメージすることである。

山田 和宏 3ページ目:山田 和宏の「モチベーション、性格特性因」を見る

3ページ目は、仕事に対するモチベーションの根源(モチベーション理論)や組織行動の特性を上段に、下段には性格特性因子の正の側面と負の側面を記載した。
ここはマルコポーロにビルトインされている項目をそのまま活用している。

仕事に対する動機要素は、それこそ千差万別であり、そこに良い悪いはない。
上司は、モチベーション高く業務に取り組んでもらうためにも、個々の動機要素に沿った個別アプローチをするべきである。

皆が上司と同じ動機要因で仕事している訳ではない。
「そんなんじゃ、上に上がっていけないぜ」とか部下に言っても全く刺さらないメンバーがいることを知った方が良い。
自らとの違いを知り、個性を尊重して、その個人の欲求が満たされるように整えてあげるのも、上司の役目の一つである。

右側の組織行動特性は、採用やアサインの時には非常に参考になる。
例えば、マネジャーや組織長にアサインされる人材は概ね「牽引行動」が高く、エンジニアを筆頭にした専門性の高い業務を担当するメンバーは「安全動機」が、人の感情を取り扱うコミュニケーションプランナーの様な役割は「親和動機」が高いケースが多い。
自ら方針を出してリードする役目を担わせた方が良いのか、チームで仕事をすることに長けているのか、実行計画を練らせるべきなのか、実行タスクそのものを負わせた方が良いのか、個性を活かした配置をするのに活用したい。

ページの下部は、特性因子からマルコポーロが導き出した+要素と-要素をそのまま表している。
他者との比較を分かりやすくするために、本部全員のメンバーから偏差値を算出し、表記した。

DIパーソナルシートから読み解く、山田常務執行役員

山田 和宏 ・・・いつも何考えてるの?

DIパーソナルシートの全てのページの説明が終わったところで、山田の例で補足してみよう。

2ページ目でもその傾向が見えたが、やはり「安全動機」が非常に低い。
繰り返しになるが偏差値である。あまりにも低すぎる(笑)
「安全動機」が低いということは、仕事に失敗はつきもの、挑戦してナンボ、と思っているということであり、こういう人にシステムのメンテナンスとかをやらせては絶対にダメだ。

「達成動機」と「権力動機」の異常な高さと合わせて解釈すると、おそらく、自分がこれ!と決めたものの完成度や成功率には非常に拘るが、オペレーション的な業務の精度には興味がないタイプだ。
動機要素の一つ「権力動機」は名称から悪い印象受けるかもしれないが、決して「権力」そのものを欲しているわけでなく、良い体験を得ることが出来たり、良いインパクトを与えることが出来るポジションや役割を求めていると解釈するのが相応しいと思う。

また野球に例えてしまうが、、開幕戦で先発したり、日本シリーズの大舞台でマウンドに上がることにやりがいを感じるタイプ、ということである。
監督の立場の人は、どこで使うか、どんな場面でマウンドに上げるか、を入念に検討した方が良いと思う。
どんな場面でも与えられた仕事をするタイプ(職人型 or ジェネラリスト型)のピッチャーではないかもしれない。

右下の注意すべき要素の「自意識過剰」がなんと「75.98」。何度も言うが、偏差値である(笑)
自意識過剰東大レベル判定。

ま、エースなんで、左下の長所である「先を見抜くセンス」「ツボを押さえるセンス」で相手バッターを封じ込める自信があるのだろうが、キャッチャーの立場からすると、まずは「自意識過剰」を抑え込んで欲しいと思う・・・(笑)
まぁ、でも、勝負どころでは僕が出したサインに首を振って、ど真ん中にストレートを投げ込むんだろうな・・・(遠い目)

おまけ

せっかくなので、幾つかのサンプルをシェアしておきたい。
興味のある方は、データを読み込み、自分なりに好きに解釈して頂きたいのだが、僕なりの「読み解き方」のポイントを、少しだけ記載しておく。

所常務執行役員のDIパーソナルシート

所 年雄 本部を統べるトップだが、その笑顔の裏には・・・?

前回触れたので改めて特筆すべきところはないのだが、「親和動機(周りの人と仲良くなって協力関係を築くことを仕事のエネルギーの源とする)」と「協力行動」のスコアが著しく低い。数字は偏差値なので・・・本部内最低スコアに近い(笑)ことに注目しがちだが、、、「牽引行動」や「完投行動」のスコアの高さと掛け合わせて、どう解釈すべきか、がポイントだと思う。 読み解くに、また傍で見ていても、独自性のある事業を創造しようとする非常に強い意欲、チャレンジングな姿勢、それを支えるフットワークと探求心。同時に、自分の思うことだけをやろうとするのではなく、結果をも意識した行動が出来るというところだろう。
個人的に僕は「ホスピタリティのなさ」と「思い込みの強さ」を、強く自身の戒めにしてほしいと心から願っている(笑)

齋藤執行役員のDIパーソナルシート

齋藤 勝重 いつも頼られる兄貴分だが、本心は・・・?

実際に本人をよく知っている僕が言うのも何だが、非常にバランスの取れた人物だとスコアからも読み取れる。山田と比較すると、使い方に圧倒的な幅がある(笑)
「安定」「オールマイティ」とか似たようなキーワードも垣間見える。
データ上のポイントは「説得・交渉」と「論理性」の高さをどう解釈するか、であろう。思考のスタイル(つまり、どんな方向性で物事を考えるか)は「論理的な理想主義者」。いわゆるバックキャスティング思考が出来るタイプということだ。

宮園副統括部長のDIパーソナルシート

宮園 康太 みんなのために頑張る!とか言っているが、本音は・・・?

パッと見ただけだと、フットワーク軽く、配慮と緻密性に欠けた思慮の浅い人物を想像してしまうかもしれないが、全体構成に着目してみると非常に特徴的な波形が浮かび上がってくる。
「チーム志向」「協調優先」「配慮」「親和動機」の低さをどう解釈するか。
一方で「気さくさ」「誠実」が一定スコアであることからも、他者と接することを避けるタイプではない。
「緻密性」が低く「フットワーク」と「負荷耐性」(仕事の量が多くなっても飲み込める)が高い人物の特徴は、仕事の速さだ。
「情報欲求」「論理性」が高く「一流志向」が低い。
ここはエクスペリエンス重視(仕事や体験を通した知的好奇心の充足を楽しむ)タイプと解釈してはどうか。

そして活躍予測モデリングへ

今回は「どんな人物なのか」の可視化に対する具体的アプローチを「DIパーソナルシート」をもとにご紹介させて頂いた。
類型論と特性論を組み合わせることで、可視化や共通言語化は一定レベルで実現できるとは思っている。

ただし、本稿でも触れたが、類型論やDIパーソナルシートと、活躍できる人材の予測は全く別の話である。
類型論を活用して〇〇タイプを多めに採用するとか、特定の特性因子を採用判断要素にするとかは科学的なアプローチとして適切ではない。
ここまでの状態では「ただの星占いレベル」(BYマルコポーロの須古社長)止まりだ。

活躍する人材の共通要素は何なのか、活躍する人材には特定の波形パターンがあるのか、それは幾つかの波形に集約されるのか、職種によって差異があるのか等々

それらの問題提起を科学的に解決するために導入したのが、「活躍予測モデリング」である。
予め活躍する特性因子のパターンを複数モデリングしておき、採用時に活躍予測度を自動算定しようという取り組みである。

次回はそんなモデリングと予測の話をお届けする。

この記事を書いた人
田村 博彦
田村 博彦
DI事業本部の元副事業本部長。10年前に都会を離れ、田舎に転居。"いつか場所を問わずに働ける時代が来る"と確信していたので、時代がやっと僕の考えに追い付いてきたなと感じている(笑)。空気の良い山中や海岸で、のんびり老犬と散歩するのが日課であり楽しみ。

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