ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第40回
2018年03月27日

今回はCRМの根本ともなる顧客をテーマとさせて頂きます。ダイレクトマーケティングを志向する企業にとって、もっとも重要な資産は顧客にほかならないからです。

以前のコラムでもふれたことがありますが、通信販売事業の4つの要素は「商品」「メディア」「フルフィルメント」「顧客リスト」であり、基本的に自社で固有の資産となると「顧客リスト」ということになります(あとの3つは固有の資産ではないという意味ではなく、自社で抱え込むことがマストではない、という意味です)。この顧客リストについてですが、日本は昔からハウスリスト主義の面があり、他社と共有化することについては後ろ向きであることが特徴でした。

逆に通販先進国のアメリカの場合は、たとえばアウトドア系のカタログ企業同士が手を結んで、お互いのカタログを送る場合もありました。もちろん、この背景には同じアウトドア系の商品であってもターゲット、テイスト、商品のポジショニング等でお互いが固有のものをもっているということも影響しているかとはおもいます。

もうひとつ、日本では従来、企業が銀行から融資を受ける際は現金化できる資産を担保としていましたが、アメリカでは顧客リストが資産のひとつとして認識されているという話しを聞いたことがあります。反面、江戸時代の呉服屋ではすでに顧客台帳をもととした管理がいち早くおこなわれているなど、日本人は資産管理の考え方にずいぶんと乖離があることになります。このあたりは日本独特の情感的な面で顧客との関係をみること、つまり諸外国に比べると「おもてなし」では断トツですが、企業的にそれをシステムティックにマネジメントすることになるとどうも不得手であることが原因のように思います。

上記について考えを巡らすと、どの顧客に対してもおもてなしを均一に行うことはおかしいのではないか、ユニバーサルサービス的な志向ではなく、だれがわが社にとっての顧客なのか、それを把握できてこその資産ではないか、というところに行きつくのです。(次回に続きます)