ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第42回
2018年04月24日

日経新聞の今月の「私の履歴書」は、ジャパネットたかた創業者の高田明氏です。私の履歴書は1956年(昭和31年)からスタートし、今のような月毎に1人を取り上げるスタイルとなったのは1987年からで、これまで登場した方々は政界、財界、文化人、学識経験者等々、日本を代表する方々です。このコラムでも以前、お話したことだと思いますが、かなり以前には通信販売は小売業の中での位置付けは低く、「士農工商・通信販売」といったような見方もされていましたので、高田明氏の登場は通販業界から初めての方でもあり、業界に関わっている者にとっては感慨深いものがあります。

さて、この稿を書いている今の時点で連載は半分を過ぎていますが、高田氏の原点は周知のとおり、長崎県佐世保市にあります。カメラ店を営業しながらラジオショッピングに取組み、全国へ販売することになっていきますが、ここに通信販売の醍醐味があります。店舗販売の場合は、例えば佐世保からスタートして、そこで№1となると、次は近隣の市・町、その次は長崎市、そして福岡市へと展開していくことが標準的だと思います。ところが高田氏のように佐世保でラジオショッピングと出会い、手ごたえを感じると全国の放送局との関係を築くことによって、一気に全国のお客様に商品を届けることが可能となっていきます。地方で創業された通販事業者にとって、これほど魅力的なことはありません。

地元を拠点として、魅力的な商品、売り方、そしてこだわる経営者の存在があればメディア展開によって全国に販売が可能となるわけです。店舗の場合は、顧客との接点が必要ですので、市場に販売チャネルを持たなくてはなりません。しかし、通信販売は、顧客との接点はメディアによって行うことになりますので、成長速度が速くなるわけです。実際、九州地区は数多くの通販事業者が展開をしており「通販王国」とも呼ばれています。高田氏の創業ストーリーを振り返るとともに、通販事業の成功方程式を学んでいきたいものです。