ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第2回
2016年09月12日

もう少し、昔話に付き合っていただければ幸いです。

私がJADMAに入局した今から30年ほど前、通販はまだまだ科学的ではなく、多くの企業が個人の経験と勘に頼って行われていた様におもいます。そのような中で米国のダイレクトマーケティング協会(Direct Marketing Association)のカンファレンスへの参加を中心とした米国視察に会員社の方々と行くことになりました。はじめて行かせて頂いたのが1988年だったかとおもいます。

それは大変なショックをうけました。なによりも小売店舗にくらべてダイレクトマーケティングは科学的かつマーケティング的であると、米国を中心とした参加者達は誇りを持っていたことです。前回、お話しした通り日本ではまだ「士農工商・通信販売」の時代です。かつて日本生産性本部が戦後、海外視察をおこなった時もこんな感覚であったのかなあ、とおもったものです。

全世界から1万名ほどの方々が集まり、ゼネラルセッションのほかテーマ別にセッションがおこなわれるのですが、4日間の会期中にその数は100を超えます。データベース、クリエイティブ、システム等々、語学の問題から我々は全部吸収することはできなかったのですが、その数だけで米国との差を感じました。またいくつかの企業の視察をしましたが、今では当たり前のように思うことも当時は目を見開き、そして吸収して追い付かなければ、というように感じた次第です。

しかし、そんな空気のなかでは声に出しては言えませんでしたが、先進的かつ高度ではあるんですが、どこか日本での展開にはなじめないと感じたことを記憶しています。顧客リストを管理してデータベースを構築し、科学的に分析して顧客にアプローチする。なるほどその通りですが、日本の場合はそれだけではないのではないか、というようなことです。これが後々、日本固有の通販、いわゆる単品通販を生んでいく土壌でもあったのではないか、とおもいます。