ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第3回
2016年09月26日

前回、お話ししたDMA(Direct Marketing Association)大会に出席して、カンファレンスや展示会の人の「景色」が日本とは違うことに気づきました。一言で言うと男性と女性がほぼ半々、つまり日本に比べてはるかに女性の参加率が高いのです。当時の米国ではどこの業界でも同じだったかとは思いますが、女性の社会参加が当たり前になった現在でも、日本の研修会やパーティーの「景色」はどうでしょうか。未だに男性の参加率が高いことに変わりはありません。

日本の小売業、通信販売も含めて顧客の中心は女性であるにも関わらず、不思議なことに企業側の中心は男性なのです。当時、ある大手通信販売企業を訪問すると「うちは女性の正社員は少なくて、雇用する際も契約社員のかたちが多いんだ」というお話を聞いていて、ほぼ女性をターゲットにしている企業がなぜなんだろう、と疑問がわいたことを覚えています。いろいろな理由はあるでしょう。しかし消費者視点を最も重視しなくてはならない、通販、ダイレクトマーケティングがそれでいいかどうか。

そんな状況のなかで、かつてJADMAでは女性が出にくいのならば女性限定の研修会をやってみようと「女性研修会」を開催しましたが、参加された女性の方々のモチベーションの高さに驚かされました。企業には眠っている人材がいる、この力を引き出さなくてはならない、とも思いました。

その後、ほとんどを女性社員で占める通販企業や、すべて女性社員で占めるコンサルティング企業が登場してきました。そこまではいかなくても、女性の力を有効に使うことができるのが通販、ダイレクトマーケティングではないでしょうか。

ある方の言葉が耳に残っています。「店舗よりも、カタログを製作したり、顧客データを分析したりする通販はクリエイティブ度が高く、小売業の中でも知的な仕事だね」。そこに女性の感性が加わることがより強い企業に進化させることを期待したいものです。