ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第4回
2016年09月26日

ご存知のとおり、通信販売・ダイレクトマーケティングは、ネットの普及の影響もありますが、今では小売業に限らずあらゆる企業が取組むようになっています。通販専業企業の方々からみれば非常に悩ましいところではありますが、通販業界という言葉は死語になっているようにも思えます。

商品の視点からはメーカーが自ら直販をすることは全く普通のことです。そして店舗業態では、オムニチャネルの名称のごとく顧客がTPOに応じて購入方法を使い分けることを前提に、ネット通販チャネルに対応していることもごく当たり前になってきました。B to Cを志向する企業ではダイレクトマーケティングの手法を取らないところはほとんど無い状況になっています。

通信販売の面からみると、これまで店舗小売業は業態という視点で括られてきましたが、現在ではネット通販チャネルを用意することにより、顧客が様々な状況で購入方法を選んでもらうことが重要な視点でもあります。たとえば今年の夏のように非常に暑い日は店舗には行かず、ネットスーパーで購入してしまう、というようなことです。

そうなると小売業にとって重要なことは、店舗であっても通販であっても、いかに自社で購入して頂けるかという視点です。当たり前のことのようですが、どのチャネルで購入しても顧客DBに登録され一元管理されて、チャネルを横断した顧客対応が求められます。この場合、シームレスに顧客が横断できるシステムをもつことが必須であり、顧客が持続的に当該企業と関係性を持ちたくなる「顧客体験」の源泉ともなるわけです。

昔、ヤン・カールソンが書いた「真実の瞬間」という書籍がありましたが、まさにわずかな店員と顧客の接点がその後の顧客の企業に対する見方を変えるということです。真実の瞬間は顧客から与えられるものではなく、企業が創造していくべきものですね。