ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第5回
2016年10月11日

今年の2月頃の日経ビジネスに、非常に興味深いひとつのランキングが掲載されました。世界の上場企業を対象とした成長性の高い企業ランキングです。営業利益、時価総額等6項目のポイントを点数化したもので、1位は中国の長上汽車ですが、注目されたのは上位に入った日本の企業の顔ぶれです。

日本のトップは世界全体で9位に入ったMonotaROで、以下スタートトゥディ(16位)、カカクコム(25位)、ミクシィ(40位)、ミスミ(58位)となっています。この顔ぶれをみると、成長性が高い日本企業はネット関連企業かB to BやB to C通販企業ということになります。

われわれが日頃、成長性が高いとイメージしている有名なIT企業や新興企業は上位には入っていませんでした。ましてや、かつて日本経済をリードした大手メーカー系企業の成長性は今や、世界の潮流からみると後れを取っている事がはっきりとしています。

日本でトップとなったB to B通販のMonotaROの売上高は5年で4倍という驚異的な成長率を示していますが、その原動力は顧客側のニーズ、価値を的確に供給しているビジネスモデルを構築していることに尽きます。同社のトップの40代に入ったばかりの鈴木雅哉社長は日本の経営者の方々が苦手としていたビジネスモデル構築型の新しい世代の社長ともいえます。同様にスタートトゥディの前澤社長もそのタイプでしょう。

B to BとB to Cの通販企業が上位に入った事は通販の主役が交代しつつあることの象徴ともいえます。アマゾンが独走か、といった記事が躍る中、日の丸・ネット通販企業は特定の市場、あるいはセグメントされた商品分野で高い成長性を示していることをみると非常に今後期待できるものと思います。

ネットの世界では「総取り」ということが確かに起こりやすいことは確かですが、マーケティングの基本であるSTP(※)をもう一度噛みしめることが必要ではないでしょうか。
※STP=Segmentation、Targeting、Positioning