ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第6回
2016年10月24日

前回の続きを少しお付き合いください。
ビジネスモデル構築型企業がイニシアティブを握っているということでしたが、ビジネスモデルとはいったいなんでしょうか。根来龍之先生は「どのような事業活動をしているか、あるいは構想するかを表現する事業の構造のモデル」。國領二郎先生は「経済活動において、四つの課題に対するビジネスの設計思想」と定義しています。いずれにせよ消費者と企業間のパイプとしてインターネットが登場してから注目される言葉となってきました。

わかりやすく事例として挙げればアマゾンが登場した時、人々は大規模な物流センターなどを建てて在庫を持つなんてもってのほかと、多くの識者、マスコミは先行きを不安視しました。実際、日本にアマゾンが事業開始した頃は、すでに大手書店がネット通販を行っており、現在のアマゾンの隆盛を予測している方などは誰もいなかったように思います。しかし、日本の大手書店が行っていたネット販売は販売チャネルがネットであっただけで、発注、在庫の持ち方は既存の書店をベースにしていたのに対して、アマゾンは調達、在庫、物流などの全体を新しい形で構築していきました。これがビジネスモデルです。

そしてビジネスモデルの究極の目的はなにか、というと顧客に対して新しい価値を提供できることです。この点がそのビジネスモデルが成功するかどうかの最も重要なところです。事業は何のためにあるのか、顧客に対して満足度を提供できるかどうかであり、全体的な仕組みとして構築することこそビジネスモデルです。

既存通販企業、とくに総合通販企業の苦戦は書店とアマゾンの関係のようにも考えられます。決して書店や既存通販企業に未来はない、と言っているのではなく、先行されたビジネスモデルにはない魅力を新たにどう構築するかが重要だということです。永遠なるビジネスモデルはありえないと思います。