ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第7回
2016年11月14日

ビジネスモデルのお話の続編です。今回は人に焦点をあてて考えてみたいとおもいます。

新しいビジネスモデルを創造した経営者の方々の前職は、創業した事業とは全く関係のないケースがほとんどです。前回お話したアマゾンのジェフ・ベソス氏はウォール街の金融機関、楽天の三木谷氏は銀行員、スタート・トゥデイの前澤氏はミュージシャンを志していました。その他にもオイシックスの高島氏、ケンコーコムの後藤氏はコンサルティング企業で活躍されていました。

ネット以前は、例えば百貨店やGMSにいた方がそこでその道のプロフェショナルとなり、ほぼ前職と同じ業種で新しい切り口の企業を創業する形が多かったようです。ところがネットが登場して以降は前述した方々のように創業した事業の経験値は全くありません。ここにビジネスモデルを語るうえでのヒントがあるようにおもいます。

たとえば書籍のネット通販から創業したジェフ・ベソス氏がもし既存の書店出身であったら、あのアマゾンのビジネスモデルができたかどうか。人はその仕事を長くやればやるほど、プロフェショナルになればなるほど、その仕事の流儀に深く入り込みます。これはこれで素晴らしいことですが、これまでのやり方をまったく否定して新しい事業モデルを構築することは難しくなっていきます。もちろんネットが登場したということも非常に大きな要素ですが、外から俯瞰できたからこそ新しい視点でビジネスモデルを創造することができた方々が、リーダーとなっていったのではないでしょうか。

たとえば通販の世界では、これまで非・通販商品であったものを通販商品に仕立てる。このためには、逆に返品をしやすいようにしてしまう。つまりどれだけ顧客本位になれるかどうかがそのビジネスモデルの成功のポイントともなります。

ビジネスモデルの陳腐化は、どこかで供給者論理の都合が出てきた時が旬を終える時とも言えるでしょう。