ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第8回
2016年11月28日

私が日本通信販売協会に在籍していた時からですが、経営者の方々とお話しする機会が多々あります。その時によく感じるのですが、ご自身が創業された方とサラリーマン型経営者の違いは「貪欲であること」に尽きるとおもいます。仕事を創造していくことや、そのために今必要であるべきことはなにか、といったことに対する執着心、そして行動の速さは経営者の必須条件とも言えましょう。とくに通信販売の業界ではいわゆるオーナー型の経営者の方が多く、実績の面でも結果を出されています。

通信販売事業は顧客と直接取引するダイレクト・レスポンス型事業です。店舗と異なるのは、店舗は選挙でいう地方区、商圏単位での展開となり、通信販売事業は(メディアの到達エリアにもよりますが)全国区での展開となります。更には一般的な広告と異なり、ダイレクトに顧客の反応が届きます。社会的な状況・天候・顧客のマインド・競合する他社とのバランス等々、様々な要因によってレスポンス率は異なってきます。そして攻めの面よりもむしろ、販売している商品に問題があった時や、顧客対応のトラブル等のネガティブな側面の問題があった時もダイレクトに影響を受けます。こういった顧客の反応に瞬時に対応し、企業としての動きを表さなければなりません。

このような通信販売の特性を受けて、絶大なる権限をもついわゆるオーナー型経営者のメリットは、内部調整を優先させる合議型経営よりも迅速な対応が可能であることです。課題は右肩上がりに順調に売上を伸ばしている時、あるいは状況判断が適切になされている時はいいのですが、その逆の状況になった時に従業員あるいは外部専門家の意見に耳を傾けることが必要となってくることです。

永遠に旬である企業はほとんどありません。通信販売も今後、大きく状況変化するとともに不透明な時代を迎えていることからも、絶大なる権限と耳を傾けるバランスが求められているとも言えるでしょう。