ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第13回
2017年02月13日

今回は九州の通販についての話です。皆様、「16:0」は何の数字かわかりますか?実は百億円に到達した通販企業数の九州地区と東北・北海道地区の比率です。「え!こんなに違うの?」と思われるかもしれませんね。たしかに健康食品、化粧品を中心とした通販企業が多いことはテレビ通販等を通して、感じられているかもしれませんが、こんなにも違うことは意外と知られていません。

九州の通販で先鞭をつけたのは明太子のふくやと言われています。博多に赴任した際に食べた明太子の味が忘れられなかったビジネスマンが、本社に帰ってから「届けてほしい」と依頼したことをきっかけに通販のビジネスをスタートしました。新幹線の博多駅開業と同じ1985年に、電話2台、オペレーター2人という体制で始まりました。

ふくやであったことがポイントで、かつて明太子の製造方法を独占せず公開した様に、地元企業の方々に求められれば通販についても教えたことによって九州に通販ビジネスが根付いていきました。地元への想いという点による貢献度は大きいと思います。そして、もち吉や再春館製薬も早くに通販に参入し、九州は通販王国へのスタートを切ることになるのです。

更に、九州の中でも特に福岡の会社は、全国で最も市場の大きい東京を中心とした首都圏を主なマーケットと考えていたことも注目されます。東京などに比較して土地の価格や人件費が安価であり、都市としての機能も充実した福岡に本社を置き、首都圏に販売することで、より利益を生み出すシステムは、今では当たり前に言われていることですが、当時としては先見性があった、ということでしょう。実際に関東に住む消費者の中には、テレビや新聞の広告で見る、こうした福岡の通販会社を東京の会社だと思っている人も少なくない、と言われています。

九州では今でも、こうした想いが脈々と受け継がれ、新しい通販企業が生まれ続け、進化していることに敬意を表したいと思います。