ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第14回
2017年02月28日

前回の九州の通販についての続きです。地方における通販事業のきっかけづくりは、まずそれを先がけておこなった会社があったことが第一の要因です。しかし、より重要なのはそれを広げていく過程であるとも言えます。

たとえば福岡に行かれた方はご存知のように、博多のビジネス圏は博多駅周辺と天神周辺の2か所に集中しており、人的な交流が深い町です。ある企業がおこなっている通販ビジネスの状況は、あっという間に共有することが可能です。実際、ターミナルが多数ある東京に比べると、その交流の密度は非常に高いものとなっています。これは、東北・北海道地域に比べても大きな特徴のひとつであるも言えましょう。

次に商品的な傾向ですが、一部の通販企業を除き、ほとんどが健康食品、化粧品のジャンルを扱い、オリジナル商品であることが特徴です。通販事業としては、かつては北海道の鮭や夕張メロンといった商品が人気を博していたことありますが、それらの商品は次第に店舗ルートでも購入できるようになり、通販事業としての優位性が弱まっていきました。それにくらべて健康志向、化粧品の多様化への流れを背景に、九州の通販は存在感を増していきました。

このオリジナル商品であることは通販事業としては広告展開上、そして商品原価率、顧客との関係性からも非常に重要な要素となっていくのです。北海道・東北地域は楽天市場での出店数は多いのですが、前述したような、いわゆる第一次産品が中心であったのと比べると対照的であったように思います。

通販の特性を考えた時、提供する事業者と購入する顧客は同一地域である必要はなく、地方にいてもその商品特性をしっかりと伝えることができるのならば、むしろコスト面では首都圏にある企業に比べて優位性があることは明白です。

九州の通販事業の隆盛をみるにつけ、ぜひ他の地域でも活性化の手段として通販事業を積極的に取り入れて頂ければと考えます。