ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第16回
2017年03月27日

最近、宅配便の問題がクローズアップされています。最大手のヤマト運輸がネット通販の荷物が増加したため、ドライバーの負担が大きくなり、日時指定の変更や運賃の増額を荷主(要は通販企業)に負担をお願いする、というものです。

通販企業にとって配送は顧客へ商品をお届けする最終的なサービスとして、顧客満足度的な視点からも非常に重要な位置を占めるとともに、自社では対応できず配送企業に委託せざるをえない、という悩ましさがあることも事実です。

ヤマト運輸を始め日本の宅配便業界は、諸外国と比較すると非常にサービス品質が高く、とくにネット通販企業が物流を重要な戦略事項として位置付けて成長してきたものといえます。

代表的なのはアマゾンで、2000年に日本に進出してきた時、自社配送センターに大量の在庫を保有し、配送のスピード化、配送料無料を打出して、急成長していくわけですが、当時、ネット通販企業におけるロジスティックスの重要性に気付いた日本の小売業、通販企業は数少なかったかとおもいます。

ただ問題は配送料無料というイメージが配送サービスに対する顧客の負担感を軽くしてしまった、という弊害をつくりだしてしまいました。配送料は無料ではなく、「配送料当社負担」が正しいかと、おもいます。実際、日本通信販売協会の「通販企業実態調査報告書」によると、「すべて無料」と言う企業は約13%で、約60%は「一定額以上の購入で無料」となっています。

店舗を利用する場合、我々は電車賃やガソリン代といった移動するためのコストを負担することは何も意識はしませんが、なぜか通販の配送料については、できれば払いたくない、ということになってしまっています。

今後、通販が存続していくためには、大きな負担コストでもある配送料を、お客様に理解して頂いていくことが必須ともいえます。今回の問題はヤマト運輸からの配送の位置づけについての問題提起とも考えています。