ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第17回
2017年04月10日

前回に引き続いて配送問題についてです。ここ数年、再配達の問題が国交省を中心として議論されていますが、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が実施した調査によると、日本における再配達率は平均19.6%。つまり約5回に1回は1度の配送では届かない、というロスを発生させていることになっています。

この背景には日本の配送が世界でも非常に高品質なサービスであることが挙げられます。たとえば米国の配送では「置き配」といわれる、不在時に玄関先へ置いてくる配送が標準となっており、再配達自体が基本的に無いことになっています。

しかし、日本の場合は日時指定配送を利用する割合は28%にものぼり、しかも細分化された日時指定を注文時にオーダーしながらも、受取りができなかったということがサービスの空回りとなっているようです。

実際、ある試算によると宅配便の走行距離のうち25%は再配達のために費やされているという報告もあります。そのほかにCO2の排出量やドライバーの労働時間も再配達によって費やされているため、大きな課題ともいえます。

もちろん、再配達があるから通販の利便性を高めているということや、高齢者が増加する中で、在宅しながらも受取りができなかったということがあるのも事実です。

しかし、前回でもお話しした通り、現在、日本の配送業界がドライバー数の限界となっている中では、顧客の利便性とサービスの継続性のバランスを取らざるを得ないことは明白です。

その対応策としてはコンビニでの受取り、ロッカーの設置(これには駅、店舗等や戸建てでの設置があります)等の配送の多様化を進めることや、1度目の配送で受け取った方へポイントを付与することなどが提言されています。

いずれにせよ、通販の重要なインフラともいえる日本の高品質な配送サービスを維持していくためには、事業者、利用者双方が意識を高めていくことが重要であるものと考えます。