ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第18回
2017年04月24日

ここ数週間、新聞記事で大きく取り上げられているのが、人口減少の問題です。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」によると、出生率が現在と変わらない(出生中位・死亡中位推計)場合、人口は2053年に1億人を割り、2065年には2015年比のおよそ3割減となる8,808万人となる、と報告しています。※1

日本の総人口は2008年をピークに減少傾向にあり、直近は6年連続で減少しております。2016年10月1日現在の人口は1億2,693万人ですから、あと37年で2,700万人の人口が減少することになるわけです。

また2015年と、50年後の2065年を比べると、働き手にあたる15~64歳の生産年齢人口は7,728万人から4,529万人へと4割減り、65歳以上の人口はほぼ横ばいですが、割合としては現在の26.6%から38.4%に高まります。

前回の配送問題の背景でもありますが、人口が減少することは日本の様々な産業に影響を与えていきます。たとえば小売業ですが、人口の減少はお財布の数が減っていくことですから1億人を割る37年後には約2割の小売業は余剰となるわけです。

さらに高齢者が増加していくことは、消費行動についても大きな変化が現れてきます。国立社会保障・人口問題研究所によれば、一人暮らしの高齢者は2010年は498万人ですが、2035年には53%伸びて762万人に増加するものとみられています。※2

たとえば食事に関する消費でも、これまで夫婦2人での消費が基本であったのが、徐々に1人暮らしに対応する商品開発が必要にもなります。実際、後期高齢者(75歳以上)になると食事を作らない傾向にあり、通販でヒット商品となっている宅配弁当やフリーズドライの味噌汁などはそうした対応商品かと思います。

人口の減少は自然的なものであり、所与の環境変化として捉えるしかないのですが、これまでの成長を前提とした市場に対する考え方はリセットして、商品開発やサービスは質や付加価値といった視点が重要となり、さらには通販的な視点からみると店舗小売業の集客的な視点から顧客に向かっていく接客的な視点が重要になっていくかと考えます。