ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第19回
2017年05月15日

前回、述べたように人口減少に向かっている中で、高齢者のウェイトは高まっていきます。

高齢者の定義は65歳以上となっていますが、昔の65歳と現在の65歳は、生活環境の違い、医療技術の進歩等から10歳くらいの違いがある、とも言われています。実際、高齢者市場を考えるうえでは、65歳~75歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者に分けてみるべきで、昔の高齢者のイメージは現在の後期高齢者が当てはまるものとみられます。

現実的には年金の状況からみても、生涯働き続けるような時代ともいえ、そのようなアクティブシニアへの移行は消費動向に大きな影響を与えていくものと思われます。

また核家族化により、夫婦2人の暮らし、あるいは1人暮らしといった世帯の増加は、保有資産の違いにもよりますが、量、あるいは価格の重視から質を重視するコストパフォーマンスへと変化していくでしょう。

そして高齢者を考える上で重要なことは、これまでの大規模な百貨店やショッピングセンターに集客することが基本的な戦略であったことが、後期高齢者になることを境に、体力面や運転免許の返上が背景となり、顧客に向かっていく戦略、いわゆる接客が大事になることです。

もちろん後期高齢者が多くなっている都市部の店舗では、高齢者が集まりやすいコミュニティ化で実績を上げている店舗もありますが、交通手段を持たなくなる地域ではダイレクトマーケティングの手法を取り入れることによって、関係性を持つことが得策かと思います。

夫婦2人、あるいは1人暮らしの高齢者にとっては、人との触れ合い自体が癒しともなり、若い世代にはない感情的な関係を構築していくことが求められます。実際、健康食品、アンチエイジング系の化粧品、健康器具等を取扱う通販企業には、高齢者を顧客の中心とした企業が数多くあります。今後は高齢者に寄り添う視点でCRMを実践している企業が注目されていくでしょう。