ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第20回
2017年05月29日

今回は商品についてのお話しをさせて頂きます。

通信販売事業にとって、商品はコア(核)であることは言うまでもありません。たとえば九州・福岡の通販企業は東京や大阪を始めとした大都市圏、さらには全国エリアを対象として事業を展開しています。つまり購入対象となる商圏は媒体展開が可能な地域であることが大きく店舗と異なるところです。ということは、取扱い商品は全国区となり、店舗とも他の通販事業社とも競合しますから、商品の独自性が強く求められる訳です。

さて、この独自性、つまりオリジナル性についてですが、全く自社独自の商品が必要なのかというと、実は通販事業の場合は「売り方」という視点が加わることによって独自性が創造されるところが重要なのです。

たとえばS社のフリーズドライの味噌汁がヒットしましたが、フリーズドライの味噌汁自体は、どこのスーパーでも販売しているものですし、先行した通販事業社もありました。それではなぜS社はヒットしたのでしょうか。

それは、「売り方」によって商品の価値を競合他社と差別化できたからに他なりません。この商品の場合は、料亭のご主人が登場して美味しさを訴求するコメントを付加したことと、10種類の具の異なる味噌汁を1セットとしたこと、価格設定を10袋・1000円として購入しやすくしたことにある、と言われています。

要は、これまでの商品の訴求の仕方を変えることで、先行した他社と異なるポジショニングをしてしまう訳です。

ということは、新しい機能をもった商品を開発するよりも、売り方を変えることによって全く新しい商品として、新しい市場を開拓できる訳です。もちろん、これは簡単ではありませんが、「売り方」のオリジナル性こそが隠れたる商品開発といっても過言ではありません。