ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第21回
2017年06月12日

前回触れた商品の「売り方」について、さらに考えてみたいと思います。

前回の「フリーズドライの味噌汁」のように、売り方によって売り上げは大きく異なってきます。2年ほど前にヒットしたバルミューダ社のトースターはこれまでのトースターとは異なり、非常においしいパンが出来上がると評判になりました。約2万5千円という高い値段にもかかわらず「家に居ながらにして、いつでも美味しいパンが食べられる」という価値を顧客は購入しているのです。

この美味しいパン+αがポイントです。このように商品を購入することによって得られる価値をイメージさせることが、商品の価値を高めることになります。ここで大事なことは商品のLTV(※Life Time Value = 顧客生涯価値)です。つまり、ひとつの商品の「売り方」を変えて行くことによって商品寿命を長くさせるわけです。

商品の改良はもちろん大事ですが、むしろ通販にとっては時代背景、競合商品との関係、顧客の心理といった変化をみながら売り方を変えて行くことが非常に重要だと考えます。

この視点からみて、上手な企業はテレビショッピング大手企業のO社でしょう。取扱い商品アイテム数は少ないですが、重点的な商品(マットレス、掃除機等)で10年以上のロングセラーを数多く持っていますが、売り方を進化させることが同社の強みだと思います。

もうひとつは、商品の訴求ポイント、つまり顧客に対するメッセージのポイントを絞ることではないでしょうか。ついつい、いろんな機能をあれもこれもと訴求した方が魅力が増すのでは、と考えがちですが、モノが充足している時代では、何かに特化していることこそが、顧客の印象に残り、購入意欲に繋がると考えます。極端にいえばマルチ的な商品は逆に強みがないことの裏返しでもあるわけです。

商品によって異なりますが、一芸に秀でている要素を前面に出すことが、売り方としては重要だと思います。