ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第22回
2017年06月26日

前々回、前回と通信販売における「売り方」について考えてみましたが、これは別の視点からみれば「ビジネスモデル」ともいえます。

以前にも述べましたが、ネットが出てきて通販のビジネスモデルは大きく変わり、既存の通販企業もその対応に苦慮しています。これまでとは異なるビジネスモデルへの変革が通販事業そのものに求められているともいえます。

そうなると、ちょっとドライに言えば、これまでの通販のプロの方達のスキルや思考が、むしろ足かせになる場合もあるわけです。事業の成否はマネジメントを行う人の能力以上のものを生み出すことはできません。ということは人の入れ替わり、ということが求められるとも言えます。

最近、大手通販企業のD社がネットの責任者を外部からスカウトして話題になりました。その方は30代半ばですが、豊富な経験と鋭い洞察力を持った方です。D社は多くの日本企業がそうであるように、どちらかというと年功序列型人事の企業であったように思いますが、これを飛び越えた英断を下したトップに賞賛を贈りたいと思います。

年功序列型を決して否定はしませんが、先々を見て企業を活性化させていってこそ、従業員の雇用は保証されるものです。情緒的なマネジメントが許されるほど、これからの通販・小売業を取り巻く環境変化は生易しいものではありません。年齢ではなく、客観的に見てその方の能力が必要か否かであり、とくにビジネスモデルの変化が激しい通販事業では、その視点が非常に重要でしょう。

私も含めて多くの人は、年齢を重ねていけばキャリア・スキルはアップしていきますが、変化を嫌っていくというデメリットも持ち合わせています。どの業界とは言いませんが、小売りの代表的な業態が変革に苦しんでいる姿はその象徴として肝に銘じるべきものです。

そのリスクが他人事ではなく、常に忍び寄っていることを管理職以上が感じていかなくてはならないと考えます。