ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第24回
2017年07月24日

毎回、固い話では退屈かと暑気払いを兼ねて、今回は少し違った角度からのお話しです。

通販業界に長く関わっている関係から、九州、とくに福岡へ行くことが多いのですが、先週末たまたま、博多祇園山笠の祭りのフィナーレとも言うべき追い山を、櫛田神社の桟敷席で見ることができました。これまでにも数回、当日博多にいたことはあるのですが、早朝、というか深夜に起きて見に行くほどの動機がなかったのですが、今回は「これも何かのご縁」と、行かせて頂きました。

これまで私自身、山笠が市内を駆け巡る勇壮なお祭り程度の認識しかなかったのですが、はっきり言いますと認識を新たにしました。ご一緒させて頂いた方に、非常に詳しく解説して頂いたこと、また進行役の放送局のアナウンサーの方に、祭りの意義等を解説して頂いたこと、が非常に良かったのです。

それによりますと山笠の祭りは「神事」、つまり神様の行事であり、1241年に始まった発端は博多で疫病が流行した際、町を清めて回ったことを発祥とするのが通説となっています。ですから今回の九州北部の大雨の被害や、東日本大震災や熊本の地震の時も、中止せよ、という声は出なかったわけです。

それから博多の街を7つの流れという、いわばチームに分けて競うわけですが、それぞれの流れは組織化されているとともに、子供たちも参加させることによって将来も繋いでほしい、という想いが感じられもします。

今では全国から毎年、多くの観光客を呼ぶ大イベントとなっていますが、神事であること、という厳粛な部分が背景にあるとともに、それを山笠という具現化された分かりやすいものを担ぐ、という男衆の人間臭さが相まって、魅力化されているわけです。

おや、通販に共通するのではないでしょうか。自社がなぜ、通販に取組んでいるのか、その背景、そして商品として具体化されていること、そして人間臭さというか、汗を感じられる、という展開です。理屈を超える「湧き上がる感動」が人を動かす、ということの重要さをあらためて感じました。