ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第27回
2017年09月11日

前回、前々回と歴史的な話が続きましたが、「古い話を今さら」と一蹴することは実は建設的ではありません。通信販売もそうですが、一般的なビジネスも結局は人対人の関係性で行われている以上、そうそう根本は変わってはいないものです。

ということはやはり、何故通販がその昔、登場して人々に受け入れられたか。そして日本の大正時代の不正を行う事業者がでてきて取り締まられたのか、等々。その事実と内容を理解していくことは、実は皆様のこれから先の事業展開の大きな指標にすることができるのです。

実際、過去の過ちは豊富に事例があるにもかかわらず、繰り返し行われてしまいます。ケーススタディは、なにも最新の事例のみならず、その本質に迫るほど、古くからの足跡において確認することができるのです。

また、企業経営は人がやるものです。人は過去の事例を認識したとしても、「自分は違う」「当社の場合はあの企業とは違う」というように喝破しますが、冷静にみれば何一つプロセスには違いのないことがわかります。経営をAIやロボットに任せたりする未来はわかりませんが、テクノロジーが発達して新しい通販の事業モデルが登場しても、企業が顧客に価値を提供する、という本質は変わりません。

最近、CRM志向を標榜している、とある大手企業が、実際に顧客と接する現場では信じられないような対応をしていると聞きました。それは高いブランドイメージがあり、新しい社員がそのブランドに乗っかってしまい、驕り、謙虚さを無くしているからだ、という指摘もあります。

企業と顧客をダイレクトに結ぶ通信販売こそ、先達が苦労してきた様々な成功事例・失敗事例等々を今一度学習することが必要です。それにより、実は先に降りかかる課題に対する準備体操ができるのです。

ネット販売も、システム志向的な自動販売機と捉えた途端にもう終わりです。顧客視点は成功してきた小売業に共通なものです。