ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第28回
2017年09月25日

現在、健康食品や化粧品のリピーターをしっかりと確保することを目的として定期購入への誘導をおこなっている企業は数多くみられます。定期購入は企業側にとっても安定的な収益を生み、顧客の継続性を実効できるものとして非常に魅力的です。一方、顧客側からみてもいちいち購入する煩わしさもなく、多くが割引の特典も得られて利便性が高いものとされています。こういった定期購入ですが、少し気になることもあります。

まず国民生活センターに寄せられる定期購入に関する相談件数が年々増加していることです。もっとも多いケースは「初回無料」などとうたいながら、実際は定期購入契約だったトラブルで、2011年以降、約1万2000件寄せられています。年度別の相談件数でも15年度の相談件数は5620件で11年度(520件)の10倍以上に膨れ上がっています。

つぎに、こうした状況を受け、いわゆる“定期縛り”を巡る消費者団体の監視強化も進んでいます。昨年の1月には、ある消費者団体が青汁のネット販売を行う某社に申し入れを行ったほか、いくつかの消費者団体が同様の表示改善を求める申し入れを行っています。

また“定期縛り”を対象にした初の差止請求訴訟もおこなわれています。これまではこの販売手法を巡って消費者庁が景表法に基づく行政処分を行った例はありませんが、気になるのは司法の場で違法性が認められれば今後の法運用に影響を及ぼす可能性があることです。

定期購入は、企業と顧客の信頼関係に基づくものであるならば、つまり申込み段階で顧客にしっかりとした認識があるなら双方にとってメリットがありますが、その段階で顧客に認識がないと、まったく逆のマイナスの関係になる恐れもあります。

ある通販企業のように、はじめに定期購入の条件、さらには解約する方法を明記することが得策であるかもしれません。

CRMが重要である中で、通販企業は顧客に配慮しつつ定期購入に取組む必要があるものと考えられます。