ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第29回
2017年10月10日

最近、マーケティングの大家であるノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授のフィリップ・コトラー氏の著書『Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital』の日本語版『コトラーのマーケティング4.0スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)が発売されました。

このマーケティング4.0とは一体なんでしょう。その前に4.0と言うからには1.0から3.0まであるわけで、少しこのことを解説させて頂きます。

近代のマーケティングの革新は2000年から2010年にかけて起こったネット社会への移行ですが、こうした様々な変化を『コトラーのマーケティング3.0』の中で体系的に論じました。

簡単に言えば「マーケティング1.0」は製品中心の考え方、「マーケティング2.0」は顧客中心の考え方、そして「マーケティング3.0」は人間中心の考え方、に特徴があります。

人間中心というと、少しわかりにくいですが、購入する商品で考えると機能的な満足だけではなく、感情的あるいは精神的な満足感を求める、といったほうが良いかもしれません。ただ3.0が表れたといって2.0や1.0が否定されたのではなく、補完される形で新たな視点が加わったものと理解したほうが良いでしょう。

さて肝心の4.0ですが「顧客の自己実現を支援したり、促進したりするような商品やサービスを開発すること」だと記されています。ただ、あらためて強調されているのが「スマートフォン時代~」と書名にもなっているように「伝統からデジタルへ」の移行でインターネットやソーシャルメディア影響力が大きくなっているということです。

こうした動きがコトラー氏の予想を上回り、わずか7年ほどで4.0を提起させた、ともいえます。実際、ソーシャルメディアには5段階の欲求階層の最も上位となる「自己実現欲求」を求める方がたくさん集まりますが、ここでのニーズは「驚きや感動の体験」、つまり、あの「Wow!」という表現です。

しかし、残念ながら日本の多くの企業はまだ2.0に留まっている、とも言われており、まずは3.0への取組みが必要なのかもしれません。