ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第33回
2017年12月11日

米国でのいわゆる「アマゾン・エフェクト」は店舗小売業に大きな影響を与えています。ここ数年、メイシーズをはじめ、J・C・ペニー、ターゲット、ウォルマート、ギャップ等の小売店は店舗過剰とスペースの縮小・転用の模索を続け、結果としては店舗の閉鎖、従業員の解雇といった報道が続いています。

いわゆる定番商品が中心というイメージが強いアマゾンですが、米国では2014年から15年にかけてアパレル関連の売上が87%も伸びており、今年はNo.1のメイシーズを追い抜くかもしれないというところまできています。

日本ではここまでの影響はまだおこっていませんが、こうした米国の状況は明日の日本の姿と言えなくもありません。ファッションや食品といった商品ジャンルで攻勢をかけるアマゾンは日本でも既存の企業に危機感を抱かせています。

その動きで注目されたのは11月22日に発表されたスタートトゥディ社の「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の配布の開始です。これは体の寸法を瞬時に採寸できる伸縮センサー内蔵のボディースーツで、着てスマホに接続すれば採寸が完了する、というもので無料配布されています。

その背景には、同社のPB商品の購入にはZOZOSUITによる採寸が条件となっていて、「超ベーシックアイテム」を「最高品質、バリュープライスで提供する」という商品戦略の一環で顧客を囲い込むという狙いがあります。

ファッションのネット販売で課題となるのは、ジャストサイズを欲しい顧客が採寸の問題で購入をためらい、たとえ購入したとしても結果として他の商品に比べて返品率が高くなってしまうという点です。

日本のファッション関連の売上が全体的に厳しい中で、ZOZOTOWNを展開する同社は着実に顧客の支持を集めて一人気を吐いてきました。つい先日、大阪にファッション専用の物流センターをオープンしたアマゾンの動向は気になるところですが、新しいテクノロジーで先手を打ったスタートトゥディ社の先進性に、まずは拍手をおくりたいと思います。