ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第34回
2017年12月25日

2017年も、もうあとわずかとなりましたが、ダイレクトマーケティングを中心に今年を振り返ってみたいとおもいます。

まず何よりも「配送の問題」に明け暮れた1年であったとおもいます。このコラムでも何回か取り上げさせて頂きましたが、川上のネット通販企業の増加による荷物の増量と、ラストワンマイルの人手不足のアンバランスが重要な問題となってきました。

「送料=無料」という顧客の根本的な意識を改めることから始めないと、問題の根源は解決しそうにありません。そのようにしてしまったのは供給サイドの企業側でもあるのですが、意識の修正は早くしたいものです。

つぎは期待されてスタートした機能性食品ですが、11月に景品表示法に基づく措置命令が下されました。いろいろな意見がありますが、行政側の規制強化は明らかであり、業界側としては広告の方向性についてのスタンスを決めにくい状況となっています。

つぎに新しい通販、ダイレクトマーケティングの可能性として期待されるものとしてAIの利用が注目され、チャット接客、あるいは機器としてはAIスピーカー等、具体的なツールが登場しました。「これがAI?」という過大な期待があるが故の所感もありますが、インターネットが登場して我々の生活が大きく変わったように、AI活用はさらに根底から変えるだけの可能性をもっていることは間違いないでしょう。

さいごに通販は、物流やコールセンターの労働力に支えられて成り立っていますが、人の問題も大きな課題として取り上げられました。大きく分けると「人手不足の問題」と「働き方改革」の2つです。これらは密接に関係しながら相反する問題でもあるのが難しいところです。たとえば顧客を重視してCRMを極めようとすればするほど、実は2つの問題との関連性から難しい実態も浮き彫りにされます。

以上、主だった出来事を羅列させて頂きましたが、すべてが来年以降も継続性が高いテーマでもあります。賢者の知恵が解決していくことを信じて、今年最後のコラムとしたいとおもいます。皆様、よいお年をお迎えください。