ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第38回
2018年02月27日

前回、転換期を迎えているダイレクトマーケティングについて「新しい視点の顧客満足度の視点を創出していくことが必要」とお話しさせて頂きましたが、今回は顧客との関係性、いわゆるCRМについて考えてみたいとおもいます。

CRМ(Customer Relationship Management)は1990年代後半に米国で誕生しましたが、その背景には大量生産・大量消費を前提としたマスマーケティングの時代から、消費者個別のニーズに合わせた One to Oneマーケティングの時代への市場環境の変化がありました。顧客との関係性を重視して、顧客の獲得や維持の向上を目指すことが重要な時代となったのです。

この手法は日本にもほぼ同時期に紹介されましたが、当時は一部の金融機関が取組んだ程度でした。しかし、インターネット時代を迎えた今日では、顧客データをもとにしたマーケティングが一般的になることによってその重要性は極めて高くなっています。

通信販売のケースで考えてみると、以前はマス広告で広告展開をおこなって新規顧客を獲得しようとした場合、通販をはじめて利用する顧客も多く存在し、商品自体も新鮮さがあったことからCPO(1人当たり顧客獲得コスト)は企業によっては数百円に収まっていた時代がありました。それが現在では、通販を利用する顧客の母数は限界に達し、さらには新聞広告、チラシでは通販広告があふれて競合しており、CPOは数万円となる場合も出てきています。以前は広告コストをたやすく回収できましたが、現在では新規獲得した顧客のコストを回収する期間は長期化していることになります。

このような理由から、今日のマーケティングでは獲得した顧客をいかに維持し、そして長いお付き合いができる関係に育てていくか、という視点が求められてきているのです。とくに健康食品や化粧品などのいわゆるリピート商品では、売りっぱなしという発想のみではある程度の規模までは新規顧客の増加での成長は可能ですが、企業としての持続的な成長を目指すにはCRМのマネジメントの導入は必須となるでしょう。(次回に続きます)