ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第46回
2018年06月26日

今回は通販広告についての話をさせて頂きます。通販広告で販売する商品の販売員はいうまでもなく広告です。販売する商品を開発する際は、広告でどのように販売するかをイメージして開発し、商品の選定を行います。広告のイメージ、つまり販売方法がしっかりと出来ていない場合は、どんなに良い商品であっても商品化することを再検討しなくてはなりません。商品開発には大きく二つの方法があり、一つは全く新しい商品を作ること、もう一つは既存にある商品の改良を行うことです。商品開発、といったイメージから前者の方が多いように思いますが、通販においては実は後者の方が圧倒的に多くなっています。

一般的に店舗や他の通販企業でも取扱われている商品であっても、広告のイメージを新しい訴求ポイントで行うことにより、既存の商品であっても顧客にとっては新鮮さを以って受け入れられます。そのためには、まず商品開発を行う際に購入して頂く顧客ターゲットをはっきりさせることです。年齢層、性別、ライフスタイル、そしてターゲットにより、日常的に不安や不満に思っていることは異なります。ターゲットをはっきりさせることは、良い通販広告を制作する原点といっても良いかもしれません。

次に広告表現での差別化をイメージしていくことになりますが、具体的には他の通販広告の表現とは異なる視点や新しい切り口を開発することで、この過程が実は商品開発や選定の肝といっても良いと思います。一般的に健康食品や化粧品といった効能効果系商品の取扱い企業が増加したことにより、通販広告は残念ながら似通ったものになり、差別化がされにくくなってきているのが実情です。長年、広告表現に一家言持っている通販創業者の方曰く「通販広告のクリエイティブは低下している」と指摘されたことは非常に重く受け止めるべきだと考えます。以前、お話させて頂いた、ネット時代であっても感情的購入を創造させるためには通販企業は商品開発や広告制作の意識を変えていく必要があるでしょう。