ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第47回
2018年07月10日

経済産業省は、4月25日に「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の調査結果を発表しました。この調査はインターネットに関する市場動向や利用者実態を調査したもので、平成10年度から毎年実施し、今回で20回目となり、日本のインターネット調査の基本となるものです。今回の調査結果(B to C分野)で気づいたことを2回に分けていくつか述べさせて頂きます。

まず2017年の市場規模は前年比9.1%増の16兆5千億円となり、2011年を起点とするとおおよそ倍近い伸びを示しています。また、EC化率(全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する電子商取引市場規模の割合)は5.79%と上昇を続けています。よく「日本のネット市場はどこまで成長するのか」と聞かれますが、現在の成長率を維持していけば、オリンピックイヤーでもある2020年には20兆円市場となる可能性があります。

その内訳を見ますと、「物販分野」は市場規模のおおよそ半分を占めて最も多いですが、伸び率としては「サービス分野」が11.3%と最も高く、次いでデジタル系分野の9.5%となっています。サービスとデジタル系は、ネット取引であるが故に付加価値が高いのかもしれません。

次に、利用するデバイスではPCからスマートフォンへの移行が顕著ですが、今回の調査ではスマートフォン経由の取引は全体の35%を占めています。(株)電通による広告費の調査でも、インターネットの広告費を押し上げている要因はモバイルでの運用型広告や動画広告の伸長であると指摘されていたのと符合します。ただ、今のスマートフォンの形は最終型ではないと思いますので、その進化によっては更に利用頻度は高まっていくことが予想されます。

商品分類別のEC化率について見ると、最も高いのは「事務用品・文具」(37.3%)で、以下「生活家電・AV機器、PC等」(30.1%)、「書籍、映像・音楽」(26.3%)と続きますが、気付くのは、どの商品ジャンルも伸び率が平均的に高いことです。偏りがあったネット商品の傾向に変化が起きるのではないでしょうか。
(次回に続きます)