ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクト
マーケティング抄
50 ダイレクトマーケティング研究所長 柿尾 正之の ダイレクトマーケティング抄 50

柿尾正之【かきお・まさゆき】

マーケティング会社にて小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務に従事。1986年04月、公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年06月、退任。現在、企業顧問、社外取締役。駒沢大学GМS学部講師(非常勤)。日本ダイレクトマーケティング学会理事。著書に「通販~不況知らずの業界研究~」(共著:新潮社)等多数

第48回
2018年07月24日

前回に引き続き「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の調査結果について見ていきます。最近、フリマアプリ最大手のメルカリが東京マザースに新規上場し、話題を呼びましたが、同調査でもフリマアプリ市場を詳しく調査をしています。それによりますと、国内のネットオークションにおける2017年の市場規模は対前年3.2%増の1兆1,200億円で、このうちCtoCの市場規模は3,569憶円と推定されています。また、国内のフリマアプリ市場規模は対前年58.4%増の4,835億円となっています。利用者側の実態(※)で見ても、通販利用者の16.6%が出品し、33.2%が購入していますので、重要な購入チャネルとなっていることが分かります。米国のeBayの流通総額は2017年に884億ドル(約9兆3,700憶円)と10年間で2倍になっていることから、今後、日本でも市場は更に増加することが予想されます。

次に、越境EC市場について見てみます。世界的に見ても2017年で対前年28.4%の伸びを示しており、4年後の2021年には倍以上の市場規模となることが予想されています。ネット取引は自国内での取引から国境を越えていくことにこそ、大きな魅力があることは明らかであり成長市場とも言えます。国別で見ると最も市場規模が大きい国は中国で、1兆1,153億ドルで2位の米国の約2.5倍の市場規模がある上に、伸び率も35.1%と非常に高くなっています。ちなみに日本は953億ドルで第4位となっていますが、上位の10か国の中では伸び率が唯一6.0%と一桁台となっています。これは、日本では自国の製品に対する信頼性が高いことや語学力の問題が背景にあるのではと思われますが、今後AI等が発展し自動翻訳の機能が向上することによって、海外からの購入に対する不安感が薄れていくことにより、市場は拡大していくのではないかと思っています。東京在住の方が各地からお取り寄せする延長に、今後は世界中の国からのお取り寄せへと発展していく可能性があると共に、国内のネット通販に係る事業者はグローバルな視野も取り入れていくことが求められます。
※出所)(公社)日本通信販売協会「全国通信販売利用実態調査報告書」~2017年~